ブログ
BLOG
ドライブCANのゲートウェイトラブル/ベンツS500
2023年03月07日
イグニッションキー操作を行ってもスターター制御を全く行わない=エンジン始動不可能状態に陥った、W221/ベンツS500の修理ご入庫です。
メーターディスプレイには「ギアチェンジせず」の警告メッセージも表示され、経験値のある方では「ISMのトラブルか?」と勘違いしそうな内容です。
「ギアチェンジ(電子シフトレバー操作)が出来ない」=ISMと呼ばれる「インテリジェントサーボモジュール」が制御せずにシフトチェンジが行えない状態なのですが、現車はエンジン始動も不可能状態に陥っています。
DAS診断機にてショートテストを実行すると、ISMだけでなくエンジン(ME)及びミッション(VGS)のECUまでもが通信喪失に陥っています。
その為、シフトチェンジ制御どころかエンジン/ミッションも制御不能状態なので、もちろんエンジンを始動することは出来ません。
ネットワーク上で起動しないECUの原因を調べるには、まず基本的な「ECUの電源及びアースが正常に供給されているか」等を順番に調べることになります。
しかし今回の場合、起動しない主要なECUが3箇所に渡り存在する…同一の電源供給回路で無い限り、その可能性は低くなります。
上記に掲げる問題のECU(ME/VGS/ISM)は、ドライブCANと呼ばれるハイスピードCAN(CAN-C)のネットワーク回路となります。
フロントシート後方にドライブCANターミナルが存在し、例えば何れかのCAN-C接続されているユニットトラブルにてハイスピードCANバスラインにノイズが発生し、ターミナルを介して感染しているケース。
個々の絞ったECUを順番にオシロスコープでドライブCAN波形を測定、特にミッションを制御するVGS端子を取り外すとフルードが廻っている状態なので「もしかして?」と思ったのですが、今回のトラブル原因となるには至っていない状態。
何れのドライブCANネットワークのECUを断線させてもノイズが消えず=CAN-C全てが通信喪失に陥る場合、CAN-Cネットワークのゲートウェイ回路に問題が発生している可能性が考えられます。
いくらVGSやISM等の個々のECUが正常であっても、ゲートウェイが成立していなければ=CAN-Cは成立できず。
その為主要となるECUが起動しない=制御出来ないのでエンジンかからず…というのが今回のトラブル原因でした。